しんぶん赤旗日刊紙「主張」
野田首相会見
再稼働強行へなりふり構わず
野田佳彦首相が8日夕方記者会見し、関西電力大飯原発(福井県おおい町)3、4号機について、「再稼働すべきだというのが私の判断だ」と明言しました。再稼働に反対してきた国民世論を踏みにじるものです。しかもその理由として首相があげたのは、東京電力福島第1原発のような事故が起きないよう対策をとってきたこととともに、「国民生活を守る」ためには夏場に限定せず大飯原発を運転する必要があるというものです。原発からの撤退を求める国民世論に真っ向から挑戦するものです。
事故の危険に反省ない
野田政権は先月末の4大臣会合で、大阪、京都など関西の自治体首長が「限定的」などの条件で再稼働を受け入れたとして、再稼働に踏み切ることを決めています。そのさい首相は「私の責任」で判断するとのべていましたが、その後福井県入りした細野豪志原発事故担当相に西川知事が首相の記者会見を求めたため、会見することになりました。再稼働を認めてもらうためなら何でもやる、「再稼働ありき」の情けない態度です。
こうしたなりふり構わぬ対応は、大飯原発再稼働に道理がないことを浮き彫りにするものです。
首相は事故を起こさない対策はとってきたといいましたが、昨年の東京電力福島第1原発の事故を受け、全国で50基の原発がすべて停止しているのは、何より原発を安全に運転する保障がないからです。福島原発事故の原因究明は尽くされず、地震や津波に対する安全対策や万一の場合の避難計画も見直しが終わっていません。原発の推進機関と規制機関が分離していないという問題も解決していません。首相はこれまでの対策は「暫定的」といいましたが、それなら再稼働すべきではありません。
野田首相が「安全」を偽るとともに、「国民生活を守るため」再稼働が必要だと言い切ったことは重大です。全国どこの原発でもいったん事故を起こせば取り返しのつかない被害をもたらすことを考えれば、しゃにむに再稼働を押し付けるなどあってはならないことです。各地の原発で新たな活断層の存在が指摘され、危険性の認識はいっそう高まっています。口先の説明だけで押し付けるのは、国民の安全を考えていない証明です。
関西の自治体首長が再稼働に同意したのは今年夏の電力確保のための「限定的」な再稼働というのが理由でした。首相は「限定的」な運転では国民生活が守れないと否定しました。一方では関西の自治体の同意を理由に再稼働を決めながら、その運転は「限定的」でないというのでは、首相の態度は自治体を再稼働に利用するためだけの“二枚舌”といわれても仕方がありません。
原発依存続けさせるな
「限定的」でない原発の再稼働が必要という発言は、原発「ゼロ」に背を向ける点でも重大です。
政府は首相の会見に先立ち、長期的なエネルギー政策について検討する「エネルギー・環境会議」を開きましたが、そこで示されたのも2030年に原発を「ゼロ」とするのは選択肢の一つで、15%程度や20~25%程度もあるという計画です。原発から撤退を求める国民の声にこたえていません。
原発からの撤退を求め、まず大飯原発の再稼働を許さない世論と運動を広げることが急務です。
12年06月9日|しんぶん赤旗.
森本ふみお コメント: コメント募集中