内橋克人さんの講演で勇気いただく
経済評論家の内橋克人さんの講演が先月、岡山市内でおこなわれました。テーマは「もうひとつの日本と地域をめざして」です。まず、「トリックを見破ろう」と題して、この間叫ばれている「『官』から『民』へ」のスローガンについて、「『民』というのは、『国民』や『市民』ではなく『民間資本』のことだ。しかも日本の『官』は、もともと“家産官僚”(=大地主や庄屋などに奉仕する官僚)であり、『公』ではない。『改革』の名で行なわれていることは、公共性が求められることを、民間大資本にやらせている『新自由主義』の構造に他ならない」と本質をズバリ指摘されました。そのうえで、「見えないものを見抜く力を市民が身に付け、声に出すことが大切だ」と強調されました。「『第二の夕張になるな』も見せしめの『プロパガンダ』であり、財政破綻の原因は、国がエネルギー政策の転換にともなう手当てや対策を取ってこなかったことにあり、夕張市民には何の責任もない」と明快に述べられました。「もうひとつの…」のスローガンは、フランスのAttac(世界中を駆け巡っている300兆ドル(世界のGDP30兆ドルの10倍)のマネーに「トービン税」をかけようと運動している団体。世界社会フォーラムなどを開催している)の「もうひとつの世界は可能だ」から来ている、と説明されました。内橋さんは、もうひとつの日本と地域をつくるために5つの提案(オルタナティブ)をされました。
①高い政治知性をもった人々による選択が生きる制度やしくみをつくること(北欧やドイツがやっているように)
②市民資本を形成すること(宇沢弘文氏のいう「社会的共通資本」、コモンズのこと)
③得られた技術の成果は国民みんなのものにすること(=技術の社会化)
④産業と産業の連鎖をつくっていくこと(生産、流通、消費、廃棄物処理などを循環できるようにする。地産地消など)
⑤F(food)E(energy)C(care)自給圏の形成(食料、エネルギー、介助がすべて自前でまかなえる地域をつくること)
また、「市民参加」とよく言われるが、「参加の階段」には下位の「セラピー」(形だけのなぐさみ)から、最上段の「権力の再配分」まであります。自分たちがどの階段にいるのかを考えてほしいと訴えられました。最後に、内橋氏は、ドイツの作家ケストナーの「飛ぶ教室」の中から、「賢さを伴わない勇気は乱暴なだけであり、勇気を伴わない賢さはクソにもならない」という言葉を送ってくれました。参院選で、「構造改革」路線ノーの審判が下った後の講演で、新しい社会づくりに非常に参考になるお話でした。
内橋克人さんの講演、よかったですね。わが山陰でも聞きたいですね。ところでこの講演会の主催団体は? どういった経緯で内橋さんを講師として招くことができたのですか?
コメント by yonago2 — 2007/10/7 日曜日 @ 17:22:27
yonago2さま
コメントありがとうございます。「市民のつどい」は十数年前から、毎年一回行われています。岡山市職員労働組合が事務局団体となって、各層、各分野の市民と協力して実行委員会方式で行われています。前日は、(比較的)新しい日本映画を監督や出演者などのトーク(舞台あいさつ)付きで行われています。日曜日は、学者・研究者の助言者をまじえて、福祉、子育て、ゴミ・環境、まちづくりなどの分科会がおこなわれ、午後に分科会のまとめの報告があり、その後記念講演が行われます。私も毎年参加しているわけではありませんが、ネームバリューのある方が講演されることが多いので楽しみにしています。
コメント by 坪中 明久 — 2007/10/7 日曜日 @ 22:43:21