住民が主人公になるとは―保母武彦さんから学ぶ
3日、倉敷市内でおこなわれた「私たちのまち倉敷を考える市民のつどい2007」に参加し、保母武彦島根大学名誉教授の話を聞きました。保母氏が問題提起したのは、「地方分権の時代なのに、なぜ住民が主人公になれていないのか」。国のいう「地方分権」は、明治以来の中央集権体制が維持できなくなり、財政事情も加わって、やむなく行なわれているとのこと。住民にとっては、分権だけでなく、地方自治とりわけ、住民自治が欠かせないのです。ところが、行政は「住民にサービスを与える役割」、「住民は行政に陳情・要求する役割」という悪しき分業が長く続き、あらたまっていない自治体が多いそうです。住民の側の「おまかせ民主主義」、行政の側の「請け負い民主主義」、さらに、少なくない自治体での議会の機能不全(有権者の支持を集めるためだけに“仕事”をする議員が多いため)が加わって旧態依然とした弊害が続いています。保母さんは、現場主義で、各地の自治体の創意工夫を見て回られています。そのなかで、長野県栄村で、高橋彦芳村長のかかげる「実践的住民自治」を紹介されました。村内で120人の介護ヘルパーを養成し、114人が社会福祉協議会に登録されているそうです。各集落ごとに12~13人のヘルパーがいて、お年寄りを3交代で介助されているそうです。“下駄履き”で行ける地域内で、ヘルパーさんたちが自分たちで介護のしごとをやりくりしています。1年間でヘルパーさんに支払われる給与総額は600万円です。正規の役場職員を雇うと1人分と少しの金額です。住民が自ら治める、そして行政(自治体)はそれをサポートするというしくみができているのです。地方自治体とは、本来、住民の地域共同体であり、相互扶助の地域共同体の再建が求められているということがわかりました。講演を聞いて、国(政府)が、憲法にもとづき、全国民の生活を保障しなければならないことをはっきりさせたうえで、政府が提唱する「自助・自立」ではなく、国民(住民)が自発的、内発的に「自律」していくことが大切ではないのかなと思いました。